水道管が隣地を経由し引き込まれている場合。

今回は不動産売却の際の水道管に纏わるリスクの一例について書きたいと思います。

一般の方日常生活される上では、漏水が起きたり、水の出が悪いなどの事がなければ、特に水道管を意識される事は少ないと思います。インフラが非常に整っている日本では水は蛇口を捻れば当然に出るものですし、水道管は地中に埋設されており目にする事もほとんどありません。しかし、実は不動産売買の取引において水道施設の状況は様々なトラブルリスクを孕んでおり、慎重に調査を行わなくてはいけない項目の一つです。今回は特に【ご自身の水道管が他人の隣地を経由し引き込まれている場合。】についての対応策を簡単にご説明いたします。

比較的田舎の物件に見受けられるのですが、稀にご自身の水道管が他人の敷地を跨いでしまっているケースがあります。こういったケースの多くは書類での取り決めがなく、なんとなくの口約束で(当時の近所付き合い、親戚付き合いの延長で)引き込みがなされています。当時を知る方が現隣地所有者であれば、比較的トラブルになる事も少ないのですが、代が変わっていた場合には配管の状況を現隣地所有者が知らない場合がほとんどです。

例えば現隣地所有者が駐車場を作ろうとして掘削を行った結果、配管を破損してしまうことも考えられますし、水道管の劣化によって漏水が起こり隣地内に何らかの損害を与えてしまう場合もあるでしょう。人によっては他人の配管が入っているのが気分的に嫌なので撤去してくれ、と主張してくる場合もあります。

そのような主張をされた場合、慣習的に言えば、ご自身の水道管を引き込み直すのが一般的ですがそれには新たに取り出す経路によっては多額の費用(50万円〜数百万)がかかります。(ちなみに隣地所有者が勝手に配管を撤去する事はできませんが決着がつかない場合、最終的には裁判へ発展し、売却出来るまでに時間がかかるばかりでなく、隣地所有者との関係が損ねる事で売却がしづらくなる可能あります。)

不動産を売却する場合、このような状況は相手方(買主)にとってリスク以外の何物でもありません。知らせずに売ってしまえば後に上記のようなトラブルに発展しかねない為、知っている限りは必ず説明する責任があります。しかし、ただ状況を説明するだけでは、売却価格に大きな影響(安くなってしまう)を与えてしまいます。ですから売却価格へ影響が出ないように事前に対応策を取っておく事が非常に重要です。

もし、売却益が十分に見込まれて、配管を引き込み直す金銭的な余裕のある場合には上記の通り、契約後に引き込み直すのが将来的なトラブルを考えれば一番の方法です。しかしながら、その余裕がない場合には承諾書や覚書で対応する方法があります。配管部分の土地利用の承諾を第三者へ渡っても引き継がせる旨の内容が取れれば一番ですし、例えば中古住宅の場合であれば、将来的に再建築を行う際には新たに引き込み直す代わりに現在は土地を利用させてもらうという方法もあります。内容については現隣地所有者の考えと照らし合わせながら、一番リスクの少ない方法で書面によって取り決めを残すのです。場合によっては隣地所有者からハンコ代などを請求される事もありえますが、そこは交渉力次第というところです。

当社でもこれまでこういった案件をいくつも対応してきましたが、売主様が最初からその状況をご存知であったケースはほとんどありません。当社から状況をお伝えして初めて知り驚かれるのです。分譲地などを購入されている場合はその心配は格段に少ないのですが、昔からその場所に住んでいて相続によって取得された場合などは一度不動産会社へ調査を依頼するのも良いかもしれません。問題が起きる前に対応する事が何よりのリスクヘッジになりますから。

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