空き家の利用価値について。

空き家問題についての話です。

昨今、ニュースにも取り上げられる空き家問題ですが、実は結構深刻な問題です。2015年現在でその数、総住宅戸数の約13.5%、人口減少、高齢化を背景として30年後には最大で40%まで増えるという予測もあります。40%と言えば2軒に1軒が空き家といった状況ですから、まるでゴーストタウンの様なイメージです。放置された空き家は加速度的に荒廃が進み、景観はもちろん、倒壊や破損による近隣への影響、放火など様々なリスクを引き起こします。海外では空き家率が30%を超えるとそのエリアの治安が急激に悪くなるという統計もあります。

福島市でも好立地の場所なのに、手が入らずに荒廃している空き家を見つけることがあります。恐らく所有者は遠方に住んでおり、日々の生活で空き家の存在を思い出すことは少ないのでしょう。しかし、近隣住民からすれば、まさしくそれそのものが日々の生活の一部です。ちなみに空き家を売却や賃貸に回すことなく、空き家のままにしている所有者の約70%が「特に理由なく空き家にしている。」と答えています。相続なので所有はしたけれども、遠方に住んでいて利用出来ない、賃貸に出すなどは面倒、しかし親から引き継いだ財産だし子供の頃住んでいた家を売却するのは実家がなくなるようで寂しい、または兄弟や親族がいる手前、売却に出す事は気がひける、など感情面の理由が裏に隠れているように感じます。

日本では未だに新築への信仰が強く中古住宅の取引があまり一般的ではない、という点も所有者による空き家への評価を下げている(空き家をそのままにしている)要因の一つだと思います。日本での住宅の平均寿命は26年、それに比べアメリカでは44年、イギリスに至っては75年。これらの諸外国にとっては、住み継ぐのが一般的で、築年数の経過はそれまで建ち続けた実績によってむしろ安心とプラスに作用するのに対し、日本における住宅の価値は20〜25年程度で0評価となります。誰でも0評価のものには「どうせ売れないだろう。」と価値を見出しづらい。よって市場には出ない。しかし実際の利用価値を考えればほとんどの中古住宅は評価するだけの価値があります。利用価値に即した評価が市場を拡大させ取引の総数を増やすのではないかと思うのです。

空き家問題を危惧する国は、直接的な政策と取りました。先の国会で「空き家対策推進法」が可決され、自治体が指定した空き家に対し、現在の6倍の固定資産税を課税できるようにしたのです。幸い福島市ではまだ条例が制定されておらず、実際に課税されるようになるまでには少し時間があるとは思いますが、法律が出来た以上いずれは課税される空き家は出て来るでしょう。

私たちはそのような空き家になってしまう前に、実際の利用価値に即した評価を元に、空き家ではなく、中古住宅として流通させるべきだと思います。流通量が増え、不動産取引がもっと身近なものになれば、購入側も自分のライフスタイルに合わせた住宅に住み替えるという選択の自由が増える訳ですから。

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