福島市の最近の不動産市場についての考察。

世の中にあるあらゆる商品の中でも、需要と供給で値動きの幅が非常に大きい商品の一つが不動産です。私たち不動産業者から見ても内容がほとんど変わらない不動産が、売れた時期によって金額が数百万単位で異なることはザラにあります。

ここ5年程度の福島市で言えば、ちょうど5年前、東日本大震災が起こる1年前から震災後1年の間が不動産価格の底の時代でした。その時期に売却された方はかなり安く売却したことになります。現在の相場の3割程度は安かった様に感じます。逆に言えば、購入する側は今より3割程度安く購入出来た訳です。その後は、皆さんご存知の通り、震災被災者の方々の住宅需要の追い風により、相場はグングン上がっていきました。一時は出せば売れるという時代もあった程です。また、震災被災者の方々は、お手元に現金があった事、また競争率が高い事を自覚されておりましたので、当時の私達から見ても「売れるはずがない」というような高値でも購入されているケースもありました。自治体や東電の補償内容がそうさせた部分もあります。この需要が2014年中まで続きました。直近で言えば、ここまでが需要の一番大きな波であったように思います。相場は緩やかに動きますから、その後下降しながらも今もある程度高値を維持しています。

しかし、今年の年明けから、少し事情が変わってきている様に感じています。目に見えて分かる程に、震災被災者の方々の需要が薄れたのです。自治体に聞いた話では、被災者の全体の1/3程度が既に住宅を購入したらしく、これは補償金額で余裕を持って住宅を購入出来るであろう方々の割合ともほぼ一致します。つまり、震災被災者の中ですぐに住宅を購入出来る方の需要はほぼ終焉を迎えつつあるという事です。通常住宅を買う際には多くの方がローンを組まれます。何十年と続くローンを組む訳ですからその対象となる不動産選びには慎重になります。現金を持っている震災被災者の方々はこれまで、こういったローンをお使いになる方々よりも圧倒的に早いスピードで購入を判断していた様に感じます。これにはやはり現金とローンでの気持ちの違いが現れている様に感じています。

しかし、その需要が薄れた今、それでも相場は比較的高値で推移しているのです。これはまだ、その市場の変化に気付いていない不動産業者が強気の高値でそのまま市場に物件を出している事に起因していると思います。それが売れていけば特段問題が無い訳ですが、やはりそういった物件は売れ残っているのが現状です。逆にこうした事に気付き、適正な価格設定を行っている不動産業者の物件は滞りなく売れていきます。現在は高値物件があることで、適正物件が引き立っているという構造になっている様に感じるのです。ですから今なら一番需要のあった2014年程度とまではいきませんが、悪くない価格で売却をする事が可能です。しかし、これがこれまで高値で出していた不動産業者が「売れないな」と気付いた時、全体の相場がグッと下がる事でしょう。高値物件が適正物件を引き立ててくれる事もなくなります。今はその過渡期にあると考えられるのです。

また俯瞰してみた場合でも、人口減少を背景に福島市を含めた時に地方都市の不動産価格は今後ますます下落していく事が予想されます。また空き家対策特別措置法や最初の団塊の世代が70歳を超えるタイミングがあと1年で訪れることからも売却不動産(特に空き家)が増える事は容易に想像出来ます。現在の需要と供給のバランスが崩れようとしているのです。

不動産の需要の面から言えば、一般的に世の中にお金が溢れている時ほど不動産価格は上がると言われています。銀行がお金を融資しやすい為です。黒田バズーカなどと呼ばれた物価上昇率2%を目指す異次元金融緩和は、オリンビック特需とも相まり実際に都心部を中心として不動産価格の上昇に一役買いました。これから先も金融緩和を行う可能性はありますが、この黒田総裁の任期も2018年までです。また、それが地方都市にどこまで影響するかは疑問です。

これらを踏まえると、利用されていない不動産をお持ちで、売却の検討をされているならば、”今”動くのが正解だと言えます。これは営業でもなんでもなく、私ならばそうするだろうと思うのです。もちろん、今後日本が移民を受け付ける可能性もありますし、未来の事は誰にも分かりません。しかし、今ある情報だけで言うのならば、今動くべきだと思うのです。今、空き家を所有している70%以上の方が、特に理由なく活用する事もなく、空き家にしているそうです。これらが社会問題となり、売りが戦国時代へと突入するまえに手を打つのが賢明だと思うのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です