不動産会社だけが知る「土地の相場」の調べ方をお教えします。

将来的に土地や住宅の売却を検討している時、ご自身の土地がどれぐらいの価格で売却出来るのか、は売主さんが最も気になることの一つです。

しかし、知り合いに不動産業者がいる訳でもないし、どこかの不動産業者に査定を依頼するほど、すぐに売却を考えている訳でもない。

そんな時には、まずはご自身の土地の相場(実勢価格)を掴むところから始めましょう。

こちらの記事では、土地の相場とは何か、またWEB上で簡単に土地の相場を調べる方法をご紹介しています。ご参考になれば幸いです。

はじめに. まずはざっくりこれだけ知りたい

お忙しい方は、こちらの要約をご覧ください。

(1) 土地の相場(実勢価格)とは?

実勢価格とは、実際の市場で売買されている価格のことをいいます。
不動産のように定価がない商品の実勢価格は常に流動的ですが、

「いつ頃、どのエリアで、いくらで不動産取引が行われたのか」=「成約価格」
「現在時点で、どのエリアで、いくらで販売しているのか」=「販売価格」

を見ることで参考にすることができます。

(2) 土地相場の参考となるWEBサイト

過去の「成約価格」の参考になるWEBサイト

・国土交通省土地総合情報サイト 

現在の「販売価格」の参考になるWEBサイト

・アットホーム
・SUUMO

 

以下より詳細な内容に入ります。

1. 土地の相場(実勢価格)とは?

相場(実勢価格)とは、実際の市場で今現在売買されている取引価格のことをいいます。
土地の価格には、「成約価格」「販売価格」「公示価」「路線価」「固定資産税評価額」など様々な指標がありますが、それらは参考にはなるもののどれか一つの指標で相場を表すものとは言えません。
どの指標をどのように見るか、以下をご参考ください。

 

(1) 土地の相場と5つの指標価格との関係

①「成約価格」
成約価格は「いつ頃、どのエリアで、いくらで不動産取引が行われたのか」を確認することが出来ます。実際に売買取引となった事例ですから取引時期が近ければ近い程、相場に近い金額と言えるでしょう。

しかし、事例はあくまでも過去のものであって現在時点も相場は流動している点に注意が必要です。ですから、近隣地の取引事例が坪あたり15万円だから、自分の土地も15万だ、という事ではなく、あくまで13万〜17万円程度との幅を持たせて考えることが重要です。
②「販売価格」
販売価格は「現在、そのエリアで、いくらで不動産が販売されているのか」を確認することが出来ます。
しかし、物件によっては売主の希望によって高値で売り出しをしている物件も多く含まれているという点に注意が必要です。

現在の販売価格では実際の売買が成立するとは限らない(価格が下がる可能性がある)のです。ですから、成約価格に同じく、金額に幅を持たせて考えることが重要です。
③「公示価」
公示価は、「一般の土地取引価格に対する指標となること」「適正な地価の形成に寄与すること」を目的とし、それぞれの土地の本来の価値を評価することとなっています。
そのため、土地上に建つ建物の形態に関わらず、対象土地の更地価格で算出するという建前があります。公示価は調査地点が全国で25000地点前後ありますが、地方都市などは事例があまり多いとは言えません。そのため、地方都市の場合、ご自身の土地が調査地点の近隣地にあったり、形状等が似ていたりするケースもあまり多くはありません。
(詳しい公示価のご説明はこちら)

④「路線価」
路線価には、固定資産税評価額の基準となる「固定資産税路線価」と、相続税評価額の基準となる「相続税路線価」の2種類がありますが、一般的に路線価と言えば、「相続税路線価」を指すことが多いでしょう。

路線価(相続路線価)は相続税や贈与税の算定基準となる土地評価額で、公示価の7〜8割程度が目安とされています。

(詳しい路線価のご説明はこちら)

⑤「固定資産税評価額」
不動産などの固定資産を所有している場合には、毎年5月〜6月の間で固定資産税の納付書が届きますから、3つの指標の中で最もなじみのある指標かもしれません。

固定資産税評価額は市町村が徴収する固定資産税の算定基準とし土地評価額で、土地評価額で、公示価の7〜8割程度が目安とされています。

(詳しい固定資産税評価額の説明はこちら)

(3) 相場以外で土地の価格に影響を与える要因

これまで5つの指標を見てきましたが、同じものが2つとして存在しない不動産には当然ながら個別差が生じます。ここでは、相場以外で土地の価格を左右する代表的な要因について見ていきましょう。

・形状 / 大きさ / 高低差
土地は形状や大きさ、高低差によって購入者の土地利用の利便性が異なるため、価格に影響を与えます。

・道路
接面している道路が公道か私道か、また幅員や形状、接面距離が価格へ影響を与えます。

・配管(上水道管・排水管)
購入者が利用できる上水道や排水の配管埋設状況や、配管経路が価格へ影響を与えます。

・境界の明確さ
測量図が作成されているか、境界杭が埋設されているか、など境界の明確さが価格に影響を与えます。

不動産は需要と供給で価格が決まるために、買主の購入後の利便性や費用負担が考慮され個別に価格に影響します。

 

2. 土地の相場の掴むための調査方法

 

(1) 相場を掴むためにはまず「成約価格」と「販売価格」を参考にする。

これまでご説明してきた5つの指標の中でも、相場を掴むためにはまず「成約価格」と「販売価格」を参考にすると良いでしょう。
なぜなら、「いつ頃、どのエリアで、いくらで不動産取引が行われたのか」、「現在時点で、どのエリアで、いくらで不動産を販売しているのか」を知ることは実際の不動産市場の動きを見る上で具体性を持っているためです。
ではそれぞれの調べ方を見ていきましょう。

【成約価格の調べ方】

過去の成約価格を調べるには、国土交通省が開示している以下のサイトが便利です。こちらのサイトは不動産業者以外の一般の方でも自由に過去の取引事例を検索、閲覧することが出来ます。

・国土交通省土地総合情報システム

画面右側のボックスで、成約時期・不動産の種類・地域を選択し検索することが出来るため非常に便利です。

例えば、
一般的な住宅地を大森エリアで所有していると仮定して「平成28年第3四半期から過去1年」の「土地」で「福島県福島市大森エリア」の成約事例を閲覧したい場合には、次のようになります。

 

次に検索結果はこのようになります。

これらの事例の中から、画像上の赤枠をポイントにご自身の土地の近い性格を持った土地を探します。

① 「取引時期」を確認する。
見ていくと、平成27年よりも28年の方が相対的に高い価格で成約となっているように見えます。相場は多少上昇傾向かもしれない、と掴むことが出来ます。

② 「都市計画」を確認する。
都市計画には都市計画法上の区域について明記されています。市街化区域の場合には、13種類の用途地域(1種住居など)が記載され、市街化調整区域の場合には「調整区域」と記載されます。調整区域の場合には原則として建物の建築が出来ないために、土地の価値は低いものとなります。(他に「区域外」などもあります。)
では画像を見ていくと、「1種住居」の中に一つだけ「調整区域」が混じっています。この事例は参考になりませんので、除外します。

③「地域」を確認する。
地域には「住宅地」「商業地」「工業地」「宅地見込地」があります。
「宅地見込地」は現状では宅地なく(雑種地や山林など)、宅地にするには時間と費用が掛かる為、成約価格は低いものとなります。
では画像を見ていくと、画像を見ていくと、「住宅地」に混じって「宅地見込地」が2つあります。この事例は参考になりませんので除外します。

④「面積」を確認する。
面積、すなわち土地の大きさは価格に大きな影響を与えます。住宅地の場合、一般的な戸建住宅を建てる際に最適な面積が最も需要が高く、大きすぎたり小さすぎたりすると、坪単価が低くなります。最適な面積はその地域によって異なりますが、地方都市など、街の規模が小さいほど、大きな土地の需要が高まる傾向があります。
では画像を見ていくと、福島市では500m2(約150坪)以上を一般宅地として購入する事は考えづらい為、500m2以上(近似値も含む)の土地を除外します。

⑤「前面道路」を確認する。
前面道路で最も重要なポイントは「幅員」です。前面道路の幅員が4.0m未満である場合には原則として建物の建築が出来ない為です。幅員が4.0m未満の場合には事例から除外した方が良いでしょう。
また、「種類」では「私道」と「県道」「市道」などの公道がありますが、「私道」の場合、条件によっては相場よりも価格が下がるケースがあります。(このデータを見る限りでは判断出来ません。)
最後の「方位」は道路の接面方向を表しますが、相場を掴む上ではそこまで重要視する必要はありません。
では画像を見ていくと、いずれも幅員が4.0m以上あり、一つだけ「私道」が含まれています。おそらく、「私道」を原因として単価が一つだけ低いと判断し、これも除外します。

⑥「形状」を確認する。
最後に形状を確認します。土地の形状は土地の利用のしやすさに影響しますので、不整形」、「袋地等」は特に相場より価格が下がります。そのほかについてそこまで重要視する必要はありません。
では、画像を見ていくと、「不整形」が3つあります。これらの事例は参考になりませんので、除外します。

以上を踏まえると、以下のようになります。

 

残った事例を参考にすると、坪単価17万円〜22万円であり、だいたい坪20万円前後が坪単価であることが確認出来ます。

【販売価格の調べ方】

現在の販売価格を調べるには、不動産販売のポータルサイトが便利です。こちらのサイトは現在の売出されている販売物件を検索、閲覧することが出来ます。

・アットホーム
・SUUMO

どちらのサイトも、比較的販売物件の掲載件数が多いサイトです。不動産の種類・地域を選択し検索することが出来るため非常に便利です。また、成約価格を調べる際に比べ、より詳細な地域の販売価格を知ることができます。

では、「大森エリア」の「土地」の販売物件をそれぞれのサイトで見ていきましょう。

アットホームの場合

 

SUUMOの場合

それぞれのサイトで掲載されいてる物件は1件づつですが、いずれも坪単価28万円前後、先ほどの成約価格と比べると高い金額となっています。
要因としては、成約事例の頃よりも相場が上昇傾向にあるか、もしくは現在の販売価格が売主の希望を反映した相場よりも高い金額設定にしているか、のいずれかであると考えられます。

 

(2)次に「路線価」を確認する。

「成約価格」と「販売価格」で大まかな相場を掴んだら、最後に「路線価」を確認すると良いでしょう。路線価は公に発表されている指標のうち、最も調査地点(価格設定地点)が多く、市街化区域内ではほとんどの地域で設定されていますので、市街化区域内の土地の場合には参考になるでしょう。
では、路線価の調査方法を見ていきましょう。

【路線価の調べ方】

路線価を調べるには国税庁が公表している以下のサイトにアクセスします。

・路線価−国税庁

こちらのサイトで、対象のエリアを指定すると以下の路線価図をダウンロードすることができます。なお、エリアは非常に詳細に指定することが出来ます。

道路部分に←39G→などと記入されている場合、39の部分が価格で、路線価はm2あたり39,000円となります。ちなみに2面以上の道路に接している場合には価格の高い方を参考とします。
また、路線価は実勢価格の7〜8割程度とされておりますので、相場(実勢価格)を考える際には、0.7程度で割り、価格を算出します。今回は、販売価格が上昇傾向にあると判断し、0.6で割り価格を算出します。

39,000円÷0.6=65,000円(m2単価)
65,000円×3.30579=214,875円(坪単価)
以上から路線価の試算上では21.5万円が坪単価あることが確認できます。

※路線価は「路線」に対して価格が決められており、その路線に面する宅地の価格(単価)は同じという考え方で、実際には個々の土地における価格はその形状などに応じて補正する必要があります。

 

(3)「成約価格」「販売価格」「路線価」を俯瞰して相場を掴む。

これまでの確認してきた「成約価格」「販売価格」「路線価」をまとめると、
・「成約価格」 坪単価20万円前後
・「販売価格」 坪単価28万円前後
・「路線価」  坪単価22万円前後
となり、相場の金額としては坪単価24万円前後が適当であろうと考えられます。

 

(4)より詳細に相場を知りたい場合には不動産会社の意見を参考にする。

これまで3つの方法で一般の方でもWEB上で相場を掴む方法をご紹介してきましたが、実際に不動産会社が実勢価格(相場)を算出する場合には上記の方法に合わせ、不動産会社(宅建業者)のみが閲覧できるレインズ(東日本住宅流通機構)と呼ばれるデータベースを参考にしています。

このレインズでは、国土交通省土地総合情報システム以上に詳細な過去の取引事例や、今現在の仲介で売却を依頼されたほぼ全ての販売物件を確認することが出来ます。(一般媒介契約は登録義務なし)

日常的に不動産取引を行う不動産会社であれば、常に確認しているデータベースであり、日頃の取引と、データベースの蓄積が不動産会社の肌感覚を磨いているのです。
物件を売却する時、それは常に将来売れるであろう金額を設定する訳ですから、
蓄積された肌感覚からの意見を聞くことは売却価格の設定において意味のあることだと言えるでしょう。

 

まとめ

今回は、一般の方でも土地の相場をWEB上で簡単に調べる方法をご紹介致しました。不動産の売却をご検討される第一歩として、ご参考になれば幸いです。

また、具体的に売却をご検討されている場合には、ご自身で大まかな相場を掴み、その上で不動産会社に意見を求める、査定を依頼することをお勧め致します。

ご不明な点などがありましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

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