失敗しない不動産売買契約内容のご提案

不動産は高額な資産ですから、売買取引にあたっては大きなトラブルに発展することもあります。後のトラブルを引き起こさない為に最も重要なのは、契約内容の取り決めです。

ここでは、売主様の立場から契約内容について最低限確認しておきたいことをお伝えしております。売主様のご参考になれば嬉しく思います。

1.  契約を締結するということ

普段、誰でも様々な物を売ったり買ったりされていると思います。例えばコンビニでペットボトル飲料を購入することも契約行為の一つです。このように対象が少額であれば、あまり大きなトラブルに発展することはありませんが、対象が高額である不動産の売買は一歩間違うと大きなトラブルに発展しかねません。

ここでは、普段あまり意識することのない「契約」について売主様の立場から再確認していおきたいことについてお伝え致します。

(1)契約とは決められた責任を果たす約束をするということ。

不動産売買契約を締結すると、売主様、買主様はそれぞれ相手方に対して責任を負うことになります。

・売主は対象不動産を買主に引き渡す責任。

・買主は売買代金を売主に支払う責任。

これらの責任を取り決めた条件のもと期限までに果たす約束をする。そして、これらの約束をどちらかが果たさなかった場合にはペナルティ(違約金や損害賠償)が発生する、ということが不動産売買契約の一番の本筋なのです。

売主様の立場からすれば、契約を締結することによって対象を不動産を買主に引き渡す責任が生じる訳ですが、契約ではどのような形で引き渡しをするのかといった事も同時に取り決めます。

具体的には例えば、

・建物の中にある荷物を全て搬出し空の状態で引き渡す。

・建物破損している一部を修復して引き渡す。

・土地の測量を行って境界杭を埋設した上で引き渡す。

など、その引き渡しの状態は、売主・買主の取り決めによって様々です。

当然ながら取り決めた責任は必ず果たさなくてはいけませんから、その内容の取り決めは慎重に行わなくてはいけません。契約内容の重要性は、売却するために取るべき責任と取らない責任とを明確に分ける必要があるのです。不動産はやはり売却出来れば良い、というものではないのです。

(2)特約が売主様を助ける。

上記のように、内容の取り決めが非常に重要な不動産売買契約ですが、一般的な契約書書式では、物件の特性によって異なる引き渡し条件を全て網羅できるものではありません。少し踏み込んで申し上げれば、一般的な契約書書式をそのまま利用すると、売主様の立場から言えば少し損である、とも言えなくもありません。

そこで、それらを補完するのが「特約(特記事項)」の存在です。

特約を定めることで一般的な契約書の内容に関わらず、特約で定めた内容を優先することが出来ます。(ただし、定めた特約全てが有効ということではなく、民法などに照らして内容によっては特約自体が無効になる場合もあります。)

また、特約にて物件のより詳細な内容を説明することは買主様にとっても、物件内容の誤解を防ぐことにもなります。トラブルの双方の誤解が起因することは少なくなく、そういった意味でも特約の果たす役割は大きいと言えるでしょう。
 
 

2.  失敗しないために最低限確認しておきたいこと

上記のように、契約内容を精査し特約を定めることは売主様にとって大きなメリットがありますが、ここでは定める契約内容について最低限確認しておきたいことをお伝えしております

(1)瑕疵担保責任の有無

売主様が買主様から責任を追及される可能性のあるものに、「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」があります。
瑕疵担保責任とは、売り渡した空き家に、契約締結当時、既にあった欠陥やキズ(隠れたる瑕疵)があった場合、売主が買主に対して負う責任の事です。この責任とは欠陥やキズを修復したり、損害が発生した場合、損害金を支払うこと、とされています。

具体的に言うと、買主様から「購入した住んでみたら、建物が傾いていたから、それを修復して欲しい」・「購入して住んでみたらシロアリが出たから修復して欲しい」などの請求が出た場合、その修復を行わなければいけない責任です。民法ではその責任を負う期間を「買主が瑕疵を知ってから1年以内」としていますので、これではいつまで経っても売主様はこの責任から逃れられない事になってしまいます。

しかし、実は一般個人の売主様に限っては、この瑕疵担保責任を免責にする事が出来ます。つまり、「売却後の土地・建物の不具合は全て買主様の自己責任です。」と取り決めて契約を結ぶ事が出来る訳です

このような契約内容で売却した場合、売却後に買主様が傾きやシロアリなどを発見しても、基本的には売主様にそれらを修復する責任はなく、全ては買主様の責任とする事が出来ます。ただし、これには例外があり、売主様が知っていた瑕疵を、わざと知らせずに売却した様な場合には瑕疵担保免責の特約は適用されずに、その責任を追及される事になりますので注意が必要です。

空き家などの築古の建物には売主様も気付かない何らかの不具合が隠れている事は少なくありません。特に空き家にしている時期が長ければ長い程そのリスクは高くなります。後のトラブルを避けるためには売主様側からすれば、瑕疵担保免責特約付きの契約を結ぶ事は必須だと言えるでしょう。

また、瑕疵担保免責特約は、買主様側から見れば損な契約内容となりますから、不動産会社によっては免責特約付きの契約に応じない会社も存在します。ですから、不動産会社へ空き家の売却を依頼する際には、必ず免責特約付きの契約は可能かという点を確認されると良いと思います。

(2)境界の取り決め

不動産売買トラブルの中で最も多いと言われるのが境界にまつわるものです。

それだけに境界の取り扱いには慎重になる必要があります。境界が明確であればそこまで慎重になる必要はありませんが、境界が不明な不動産を売却する場合、その対処方法は大きく分けて2つあります。

①確定測量を行う。
これは土地家屋調査士に依頼し、公図を始めとした様々資料を照らし合わせ、境界の位置を割り出し新たに杭を埋設する方法です。確定測量には隣接地の所有者からも境界確認の署名と捺印を頂きますので、言葉通り境界が確定します。境界が不明な場合、最も用いられる方法であり、かつ一番安心出来る方法です。
しかしながら、土地の形状や大きさによって30〜100万円程度の費用負担が発生します。また、稀に隣接地の所有者から異議を唱えるものなとが出てきた場合にはその対応策を迫られる事になります。(売却前であれば、対応策には様々あります。)

②境界が不明瞭の物件として取り決め(特約)を行い売却する。
これは、契約内容の取り決めとして、「境界が不明である」旨を告知し売却を行う方法です。不明である事を前提として売却するために、そもそも境界を確定する必要がありません。しかしながら、ほとんどの買主様は境界が不明である事を嫌がるために、売却金額を通常相場よりも低く設定せざるを得ません。(少なくとも境界確定費用以上に低く設定するのが一般的です。)
その場合には「不明で売るために万が一隣接地所有者との間にトラブルが起きたとしても、責任を負わない」旨を契約書に特約としてしっかり明記しなければいけません。

境界トラブルは、境界が不明であるにもかかわらず、なんとなくそのまま売却してしまったケースや、境界だと思っていた位置が隣接地の所有者の認識と異なる場合に多く見受けられます。①の確定測量が行える場合には、将来的なリスクを考えれば費用がかかっても行う事がベターであると思います。しかしなんらかの理由によって確定測量が行えない場合には、その旨を必ず明記し売買することが重要です。

(3)取り決めた引渡期限に余裕があるか

契約書には、売主・買主がそれぞれ取り決めた責任をいつまでに果たすのか、その期限を取り決める項目があります。売主様の立場からすれば、「引渡日」の期限が最も重要となります。

引渡日の期限は、契約で取り決めた条件を全てクリアし引渡しを行うリミットを定めたものです。例えば、確定測量を行った上で引き渡すとしている場合には、当然ですが確定測量が終わっていなければ引渡しは出来ません。また、期限は簡単に延長出来るものではありません。

仮に、なんらかの理由によって取り決めた条件を期限までに整えることができず、期限延長となった場合には、最悪の場合には違約金を請求されてしまう可能性も考えられます。引渡し期限は、引渡し条件の内容によって、十分に余裕のある期限を設けることをおすすめ致します。

(4)その他

物件の個体差によって、契約内容で確認しておきたい事項は非常に多岐に渡ります。それらの一例をご紹介したいと思います。

・道路が私道である場合の対処

・ライフライン設備(電気・ガス・水道・下水)の状況と対処

・建物に未登記がある場合の対処

・近隣住民との関係についての取り決め

・土地の埋設物や土壌環境についての取り決め

・将来的な環境の変化に対する取り決め
など

 
 

まとめ

今回は不動産売買契約内容について、失敗しないために最低限確認しておきたい事、またその対処法についてご提案させて頂きました。将来的なトラブルを起こさない安全な不動産売却には、やはり事前の準備が大切です。ご参考になれば嬉しく思います。

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