空き家は「負の遺産」なのか?

一昔前、不動産は必ず値上りすると言われていました。絶対的な投資対象であったのです。当時、銀行はこぞって不動産に対して融資を行いました。そして容易に融資を受ける事が出来る環境を背景に、多くの人がキャピタルゲイン(売却益)を狙いどんどん不動産に投資しました。しかし、それは実需(実用的に土地を利用する需要)とはかけ離れた価格へと跳ね上がっていきます。土地は本来、利用されてこそ価値のあるものです。実需とかけ離れていけば、当然どこかで限界が訪れます。そして1992年バブルの崩壊ととも、膨れ上がった融資額はそのまま不良債権へと変わり、その後の20年に渡り日本経済を苦しめる事となります。

2016年の視点から見れば、当時、多くの方が信じた「土地神話」とは、たったそれだけの事です。

今、この「土地神話」を信じる方はほとんどいらっしゃらないと思います。ピークアウトした1992年から全体的に見れば不動産の価格は下落し続けている事は周知の事実だからです。(福島市の原発避難者の需要による不動産価格の上昇は一時的なものです。)

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これは国土交通省で発表している日本の2050年までの人口グラフです。今から29年後、日本の人口は1億人を下回り、2050年には高齢者(65歳以上)の割合が日本の人口の40%に達する見込みです。人口総数は右肩下がり、高齢者割合は右肩上がり、不動産にとってこれが何を意味するかといえば、需要と供給のバランスの崩壊です。簡単に言えば、不動産が余る時代に突入するのです。これは単純に人口が3/4になり、不動産需要も3/4になるという事だけではなく、その3/4の人口の内、40%は購買意欲の低い高齢者であるという事を考えると、乗算的に不動産の需要が冷え込む事が予想されます。

「空き家」の将来を考える時に、まず全体傾向として需要の下落は間違いなさそうです。次に、もう少しミクロな視点で「福島県」においてはどうでしょうか。

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こちらも、国土交通省で発表しているエリアにおける人口減少の分布図です。人口が増えるエリアは福島県全域で見ても10箇所程度で、ほぼ全ての自治体で減少する見込みです。なんと50%以上減少するエリアの割合が一番大きいのが見て取れます。全体の平均を取ると、2050年時点で現在から37%人口が減少しているとの見込みなのです。さらにこれから先、若い世代の都市部集中は加速するとの予想から地方における少子高齢化は加速度的であると言えます。

現在の福島市では、どのような不動産でもきちんとした調査と、適正な価格設定がなされていれば、「売れない不動産はない」と断言出来ます。実際に当社でも様々な問題を解決し一癖、二癖ある不動産売却を成約へと導いて参りました。しかしこれまでは、基本的に需要と供給がバランスされている前提がありました。しかし近い将来、そのバランスが崩壊するとしたら、、、と考えるとそもそも「売れない不動産」が存在してくるのかも知れません。また売れる不動産であっても、人口ベースの単純計算で言えば毎年約1%づつ需要が下落していくと言えます。

仮に所有されている不動産が「売れない不動産」であっても、固定資産税などの税金や、管理費用、場合によっては建物除去費用などは、売れる、売れないに関係なく負担せざるを得ません。このような不動産を相続等により取得する場合それは将来に渡って負担となる訳です。

相続では、これらの不動産を相続放棄する事も可能です。しかし、相続放棄をする場合、相続出来る全ての財産に対して放棄する事になる為、その他の試算についても放棄しなくてはいけなくなります。

また、相続した不動産を自治体へ寄付するという方法もありますが、その要件の中には「境界を確定させる事」など隣地の協力が必要なものもあり、同じく隣が空き家であった場合、さらに権利の枝分かれが進み、所有者が不明であるといった場合には寄付する事も出来ません。また、寄付を受けるか否かは自治体の判断となりますので、その時点で人口が減り、税収が減っている筈の自治体が管理費のかかる不動産を引き受けてくれるか、と言えば非常に未知数な部分があります。

冒頭に戻り、では、空き家は「負の遺産」なのか?との問いに答えるとすれば、福島市において現在は「負の遺産ではない」とお答え出来ます。しかし、これから先どこかのタイミングで「負の遺産」へ変化する空き家が出てくることはまず間違いないでしょう。ちなみに、現在の空き家のままにしている所有者の内、70%が「特に理由なく空き家にしている」と回答していますが、この空き家が市場に流れ込んでくるだけでも相当のインパクトがあります。世の中が空き家を問題として捉えた時から需要と供給のバランスが崩れ始めるのだと思います。

地域にとっての「家」という考え方、ご自身の「資産」としての考え方、そしてもちろん、親族にとっての「実家」という考え方、そのどれもが正しいと思います。そのお考えにの中に、取り巻く環境、将来性を含めて「ただなんとなく」という事ではなく、最適な「判断」をしなければならない時代になったのだなと思います。当社もお客様お一人お一人のそのご判断に最適なお力添えが出来る様日々努力して参りたいと思います。

 

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