昨日は、筆界と所有権界について書きましたが、今日は境界上の塀やフェンスについて書きたいと思います。塀や、フェンスは隣地との境界をわかり易く明らかにする事が出来、また住宅の外構の見栄えも良くなりますから、福島市でも多くの住宅が設置しています。最近に建築された住宅の塀やフェンスは基本的に自身の土地内に設置する事が多く、隣地の方もフェンスを設置すると、一つの境界に対して境界を挟むように2重にフェンスを設置しているようになります。一見すると、2重にフェンスを設置する事は無駄に感じますが、実は無駄ではありません。やはり自身の土地内に設置するのが、トラブルを防ぐ意味で正しいのです。
築年数が比較的経過している物件では、隣地との境界上に1つの塀が立っており、その中心線が境界であるというケースが多く、一般的には隣地所有者同士が塀やフェンスの費用を半分ずつ出し合い、互い境界を中心線として設置されています。設置当初は所有者同士の合意があって設置されたわけですから、本人同士がそこに住んでいる間は特段問題が起こることは少ないでしょう。しかし、それが第三者へ渡る時に大きく分けて3つの問題が起こる可能性があります。
一つは維持管理の問題。こういったケースの塀、フェンスはほとんどがブロック塀です。時期的にも鉄筋があまり組み込まれていない塀が多く、先の震災でも多くのフロック塀が倒壊しました。また倒壊せずとも、損傷を負っているブロック塀は多く見かけます。それらの修復には当然に費用がかかります。お互いに修復したいと思っていれば、折半して費用負担すれば良いのですが、そうでない場合にはどちらか一方の修復したい側が最終的には費用負担し修復する事になる事が多いわけです。その場合、費用負担した方は「なぜ自分だけが」と釈然としない思いが残るでしょう。
また、第三者へ渡った場合で、特に第三者が新築する場合に多いのですが、見栄えの悪いブロック塀を撤去したい、もしくは駐車場を増設する為に塀の一部を撤去したい、といった継続利用の是非に関する問題もあります。これが2つ目の問題です。この場合にも、では撤去費用は誰が持つのか、また撤去する事によってプライバシーが確保できるのかなどの問題が浮上します。また、例えば境界付近に花壇などを設置していた事により塀に土圧がかかっている場合など、そもそも撤去する事が容易ではないケースもあります。
そして3つ目は一番根本的な問題ですが、所有者が変わる事で元々の合意内容が分からないという問題です。そもそも、本当に境界の中心線上に塀が設置されたのか、その塀は誰が費用負担して設置されたものなのか、修復や撤去の場合の責任の所在はどうするか、塀の支えはどちらにあって、負担している側は納得しているのか、など上記2点等の問題が浮上した際の取り決めが曖昧がない為に話し合いが難航するのです。
私の以前担当した事案でも、同じく話し合いが難航したケースがあります。売主様からお話しを聞いている段階では、境界の中心線上に費用を折半して塀を設置した、との事でしたが実際に測量をかけてみると、実は売主様側の敷地に設置されており、しかし塀の支えは隣地に設置されていたのです。買主様はその塀を解体したいとのご希望でしたので、隣地の方との話し合いを行ったのですが、所有者が代替わりされており、事情を掴んでおられない為に「これまで塀の支えはこちらが負担してきたのだからブロック塀を解体されるのは困る、解体するのならば同等程度の塀をそちらの費用負担で設置しろ、当然解体費用も出さない」等、一方的な主張をされておられました。丁寧にご事情を説明し、何度かの交渉で最終的には落着したのですが、やはり全てのケースでうまく話がまとまるとは限りません。
このような問題はやはり第三者へ所有が移る際に浮上してきます。もし、売却の後にこれらの問題が浮上し、買主から訴えを起こされたら大変です。売却の際には、やはり詳細な調査と、隣地の方との話し合い、また話し合いの合意点を覚書などで残しておく事が重要です。また、覚書の内容は所有者が変わっても引き継がれる内容にしておくと良いと思います。もし、このようなケースでお困りの方がいらっしゃいましたら、当社でもお力になれると思いますので、お気軽にご相談ください。
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