不動産売買で所有者の判断能力の有無を確認する「本人確認」「意思の確認」とは?

昨今、銀行をはじめとし様々な場面で本人確認、意思の確認がなされておりますが、高額な資産である不動産の取引についても同じく、本人確認、意思の確認が行われます。
本人確認、意思の確認は売主様本人に対し行われるものですから、基本的には何ら問題が起きることなく確認が出来るのですが、売主様がご高齢であった場合にはについて少し注意が必要です。
ここでは取引の際の本人確認、意思の確認の内容と、その判断能力についてお伝えしています。
ご参考になれば嬉しく思います。

1. 本人確認と意思の確認について

不動産取引は高額な資産を扱いますから、取引に間違いがあってはなりません。そのため、実際に所有権や売買代金が動く際には、取引(売却)を行う者(売主様)に対し、職権を持つ司法書士立会いの元、本当に本人なのか(本人確認)、本当に売却するのか(意思の確認)といった確認を行います。
これらの確認が取れない場合、所有権の移転が行えず、取引は不成立となってしまいます。

(1) なぜ本人確認、意思の確認を行うのか?

不動産売却すると代金を清算し買主様へ所有権の移転をする為に法務局へ各種必要な書類を申請する訳ですが、法務局の登記官は形式的に定められた書類が揃っていれば、原則、登記申請を受理します。
仮にその登記申請が実体の伴わないもの(売主様に売る気がない、など)であったとしても、書類が揃っていれば申請は受理されてしまうのです。
そこで、司法書士がその実体上の確認を職責で行っています。

これが「本人確認」(※1)と「意思の確認」です。

確認の内容は具体的には以下のようなものです。

・本当に本人であることに間違いないか
・本当に売却することに間違いないか
・売買対象の物件に間違いはないか
・本人は売買することを正確に認識しているか

これらは本人確認書類の提出(身分証明書など)や、署名、司法書士からのいくつかの質問に本人(売主)が答える形で確認されますが、通常であれば特段難しいものではありません。

※1 本人確認については「犯罪による収益の移転防止に関する法律」により、司法書士や宅建業者などが特定事業者として指定されており、本人確認書類の写しの保管等が義務化されています。

(2)所有者が高齢者である場合には注意が必要

通常であれば特段難しいものではない「本人確認」「意思の確認」ですが、本人が高齢者である場合には少し注意が必要です。

「本人が売買することを正確に認識しているか」「本当に売却することに間違いないか」といった意思の確認は、あくまでも本人に判断能力があることを前提に確認されるものです。
そもそも、判断能力がなければ意思の確認を行うことが出来ません。

例えば、

・医師により認知症と診断されている。
・名前や住所などを答えることができない。
・文字を書くのが困難である。

などの場合にはその判断能力の有無が問われることになるでしょう。そして、もし立ち会った司法書士によって判断能力がないと判断された場合には所有権移転登記が出来ず、不動産取引自体が不成立(無効)となってしまいます。

(3)実際には依頼する司法書士によって判断基準は異なる。

判断能力の有無についての判断は立ち会う司法書士に委ねられていますが、その判断基準には明確な取り決めがある訳ではありません。

それは仮にA司法書士が判断能力が無いと判断した人物であっても、場合によってはB司法書士が判断能力が有ると判断することも十分に考えられるということです。
つまり、A司法書士では出来ない不動産取引をB司法書士では出来るということですから、本人の判断能力に不安がある場合には実はこの部分を理解しているかということは非常に重要なのです。

※こちらの件について詳しくお知りになりたい方がいらっしゃいましたら、当社までお問い合わせ下さい。お力になれるかもしれません。

(4)本人の判断能力がないと判断された場合にはどうするか?

本人の判断能力がないと判断される場合には、不動産取引を行うことは出来ません。しかしこれでは、例えば本人の介護施設入居の費用捻出の為に不動産を売却する、など差し迫った理由がある場合には困ってしまいます。そのような場合、本人に代わって不動産取引を行う方法があります。

それが「成年後見制度」です。

成年後見制度は、判断能力がない本人のために成年後見人等(保佐人・補助人)を選出し、本人を代理して本人の利益となる法律行為(売買契約など)を行うことが出来るものです。

後見の申立は本人の住所地を管轄する家庭裁判所で行いますが、申立から実際に後見人が選出されるまでには少なくとも1ヶ月〜2ヶ月程度の時間を要します。また、裁判所は様々な事情を考慮して後見人を選びますので、場合によっては親族(子供など)ではなく、専門職(司法書士や弁護士)を後見人に選ぶこともあります。

詳しくは「所有者に判断能力が無い場合の「成年後見制度」について」をご参考下さい。

 

まとめ

今回は、本人確認と意思の確認についてお伝え致しました。それぞれの確認が取れなければ不動産取引は行えませんので、ご本人(売主様)がご高齢の場合には、あらかじめご確認されることをおすすめ致します。
また、司法書士のご紹介など、当社でお力になれることがございましたらお気軽にご連絡下さいませ。

1 個のコメント

  • 88歳の父と85歳の母が二人の名義で持っている自宅売却について、教えてください。父は認知症の薬を飲んでますが、進行が緩やかでかなりしっかりしています。母はアルツハイマー認知症なので、殆ど判断が出来ません。父母二人名義ですが、父の自宅売却希望意思である場合、売ることは出来るのですか?
    父は自宅売却をして施設に入るつもりです。認知症の薬を飲んでいたら、成年後見人制度しかダメでしょうか?

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