空き家を取り巻く現状と将来予測

これまで日本の住宅取得は人口の増加に支えられた経済の拡大から「一国一城の主人」に代表されるように新築住宅の建築が主流でした。
しかし、その結果これまで建築された多くの住宅が誰も住まない「空き家」となっています。
その数、実に820万戸、日本の総住宅数の10件に1件以上が空き家となっているのです。
さらに今後、人口や総世帯数の減少を背景に最大で40%が空き家になるとの予測もあります。

こちらのページでは現在空き家を取り巻く環境と将来予測をお伝えしています。
“家余りの時代”に突入しようとしている今、空き家所有者様のご参考になれば嬉しく思います。

1.空き家を取り巻く現状

(1)増え続ける空き家の数

こちらは法務省統計局のHPより抜粋した空き家総数の年代別グラフです。
昭和38年から始まるグラフは年々右肩上がりを続け、平成25年時点で日本の総住宅数6,063戸の13.5%にあたる820万戸が空き家となっています。
さらに今後も空き家は増え続ける見通しです。(詳しくは「将来の空き家率予測」をご覧下さい。)

(2) 利用されていない空き家が増えている

次に空き家の活用種別割合をみていくと、二次的住宅、賃貸用住宅、売却用住宅は減少傾向であるのに対し、その他の住宅のみが増加しています。

このグラフは活用目的のある空き家は減少し、活用目的のない(利用されていない)空き家が増加していることを指しています。

(3) 空き家がもたらす弊害

空き家総数、利用されていない空き家の増加は社会に対し様々な弊害をもたらします。その弊害は大きく分けると「社会(地域)に対する弊害」と「資産価値の低下」です。具体的には以下のようなものが挙げられます。

【社会(地域)対する弊害】
・雑草、悪臭などの衛生環境の悪化
・景観の悪化
・不審者による不法侵入、不法占拠などによる治安の悪化
・不審者による放火などのおそれ
・建物劣化による通行人の生命・身体への被害のおそれ
【資産価値の低下】
・建物劣化スピードが早まることによる資産価値(建物価格)の低下
・空き家の印象による地域全体の資産価値(土地価格)の低下
・土地として利用することが出来ないことによる機会損失

つまり、空き家を放置することは百害あって一利なしと言えます。

(4) 空き家対策特別措置法

上記の通り、様々へ弊害を引き起こし社会問題となりつつある「放置空き家」に対して、国は平成26年に「空き家対策特別措置法」を全面施行し、その中で今後空き家所有者様に対して大きな影響を与える取り決めがなされました。
それが「特定空き家等に対する措置」です。
これにより、今後「特定空き家」に指定された場合、固定資産税の住宅用地の特例からの除外(固定資産税が3~5倍になります。)や、市町村長から建物解体処分命令など大きな負担を迫られる事になりました。

(くわしくは「固定資産税が5倍?!空き家対策特別措置法について」をご覧ください。)

2.空き家を取り巻く将来予測

(1) 日本の人口は加速度的に減り続ける

空き家の将来予測を考えるとき、まずそもそもの不動産需要の将来について考えなければなりません。そして不動産の実需(実用的に不動産を利用する需要)は人口と相関関係にあります。

これは国土交通省で発表している日本の2050年までの人口グラフです。今から29年後、日本の人口は1億人を下回り、2050年には高齢者(65歳以上)の割合が人口の40%に達する見込みです。
これは単純に人口が3/4になり不動産需要も3/4になる、という事だけでなく、その3/4の人口の内、40%は購買意欲の低い高齢者である事を考えると、乗算的に需要が冷え込む事が予想されます。
「空き家」の将来を考えるときに、まず全体傾向として需要の下落は間違いなさそうです。

(2) 福島県の人口増減分布図

次にもう少しミクロな視点で「福島県」における人口増減を考えてみます。

こちらも国土交通省が発表しているエリア別の人口増減分布図です。人口が増えるエリアは福島県全域でも10カ所程度で、ほぼ全てのエリアで減少する見込みです。50%以上減少するエリアがもっとも大きいことが見て取れます。全体の平均をとると、2050年時点で37%減少している見込みです。
さらにこれから先、仕事を持つ若い世代の都市部の集中が加速するとの予想から地方における少子高齢化は加速度的であると言えるでしょう。

(3) 将来の空き家率予測

今後も増え続けると予測される空き家数ですが、野村総合研究所での試算によれば、これまで通り空き家の除去や有効活用が進まなければ、2033年にはそう住宅数7130万戸、空き家総数は現在の約2.6倍である2170万戸、空き家率は30%を超えるとの予測を発表しています。
これは毎年1%づつ空き家率が上昇していく計算となります。

(4)需要と供給バランスの崩壊(家余りの時代に突入する。)

人口総数は右肩下がり、高齢者割合は右肩上がり、さらには空き家の総数、割合の増加、不動産にとってこれが何を意味するのかといえば、需要と供給バランスの崩壊です。簡単に言えば、不動産が余る時代に突入するのです。

これまで福島市では、どのような不動産でもきちんとした調査と、適正な価格設定がなされていれば、売れない不動産はありませんでした。事実、どのような不動産でも私の担当した不動産で最終的に売れなかった不動産は一つもありません。
しかしそれは基本的に、需要と供給がある程度バランスしている前提がありました。近い将来、その前提を覆し、バランスが崩壊するとしたら、場合によっては「売れない不動産」が生まれてしまうのかもしれません。

仮に所有されている不動産が「売れない不動産」であっても、固定資産税などの税金や管理費用、場合によっては解体費用などは、売れる、売れないに関わらず負担せざるを得ません。

それはこれから先、どこかのタイミングで空き家が「負の遺産」へ変化してしまう可能性を示唆しているとも言えるでしょう

まとめ

今回は「空き家を取り巻く現状と将来予測」についてお伝えしました。
今後、これまで通りの流れでは空き家問題については悪化の一途を辿ることになります。空き家問題は日本社会全体の問題であり、ひいてはそこに暮らす人々の生活環境に直接影響を及ぼします。

また、空き家の資産価値の側面からも所有者様には早急に対策を考える時期にきているのだと思います。こちらの記事が空き家所有者様のご参考になれば嬉しく思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です