市街化調整区域では空き家を解体してはいけません。

管理されていない空き家は、景観上の問題や地域へ実質的な損害を与える可能性もあり、地域の荒廃に繋がる為、基本的には撤去(解体)されるべきです。しかし、どんなにボロボロの空き家であっても撤去してはいけない空き家があります。

それは、「市街化調整区域内にある空き家」です。

日常生活において普段意識する事はないかと思いますが、実は自治体は、エリアによって建物が建築出来る区域と、建物が建築出来ない区域とを厳格に分けています。その中で「市街化調整区域」内の土地に関しては原則建物の建築が出来ないエリアに指定しているのです。

しかし、現在市街化調整区域内の土地にも多くの建物が建っています。これは昭和45年10月15日までは、区域分けがなく、どこにでも自由に建物が建築出来た事が由来しています。(区域分けがなされた事を「線引き」と言います。)

これまで、当たり前に建物が建築出来た土地が、ある日突然建物が建築出来ない土地になってしまう、これでは市街化調整区域に土地を所有する人の財産価値が極端に下落してしまいます。また、例えば子供が建物を建て替える際に、建築が出来ないということになると、とても困ってしまいます。そこで自治体は特に居住権の観点から様々な経過措置をとり、ある程度柔軟に対応してきました。少し乱暴に言えば、市街化調整区域で現在建物が建っている土地は、線引き前から居住用の宅地として使われていた経緯がある土地なのです。(もちろん、生活利便の為の施設など、例外はあります。)

その中で、市街化調整区域の中で現在でも建て替えが可能な要件の代表的なものの中に「線引き前住宅」「既存宅地」「既存の権利」「分家住宅」などがあり、これらを行使して建物を建てているケースがあります。(※詳細は複雑になる為省きます。)

これらのケースで市街化調整区域内に当時建物を建築している場合には、どれだけその建物が老朽化したとしても除去してはいけません。それは、もし建物を除去して1年以上経ってしまうと再建築が出来なくなってしまう為です。(1年以内かどうかは公的資料で証明が可能なものに限ります。)

これは非常に重要なポイントです。当然ながら、建物が建築出来る土地と、出来ない土地とではその資産価値は雲泥の差があります。

以前、ご相談頂いた事案の中でも同様のケースがありました。ある方のご紹介で相談の為に現地へ伺ったところ、ちょうど解体業者が見積もりをしていたのです。もちろん、当該地は市街化調整区域です。売主様は建物の価値は無いから、どうせ売却するなら買主さんに気持ちの良い状態で買ってもらいたいとの思いで解体を考えていたそうなのですが、上記の事をご存知ではありませんでした。解体を行う前にご相談を頂きましたので事なきを得た訳ですが(相場なりの価格で売却出来ました。)、もし当社へご相談頂くタイミングが少し遅れて建物除去後であったなら、投げ売りのごとく出来る限り早く売却する価格設定しか出来なかったでしょう。

不動産の取り扱いにはこのように、知らないと大変な損害を被る恐れがある取り決めがたくさんあります。私ども常に慎重に調査を行い、売主様にとって最適なご提案が出来るよう努めなければならないと思っています。やはりここに社会における不動産会社としての存在意義があると思うのです。

 

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