私道の持分について。

通常、ほとんどの方がご自身の住宅へ出入りされる際には当たり前に目の前の道路(通路)を利用される訳ですが、この道路にも種類があると以前のブログ記事「道路に見えても道路じゃない?」でお伝えしました。その中でも私道はリスクが伴うと書きましたが、今回は少し踏み込み、実際に私道に面した不動産売却時の対処方法を書きたいと思います。

まず、私道とは、自治体(国、県、市町村)以外の民間が所有している道路を指します。当然ながら私道には所有権(道路を所有し利用する権利)があります。個人や会社など1人の名義で所有している事もあれば、複数で所有している事もあります。複数で所有している場合には、所有権の持分をそれぞれの割合で所有している事になります。私道に面した不動産を売却する場合、この所有権の持分を持っていれば、基本的には安心です。仮に道路について何らかのトラブルが起こったとしても、持分を持ってさえいれば、他の道路所有者へ対抗する事が出来る為です。ですから持分の大小に関わらず所有権持分を持っているという事が重要なのです。

例えば、私道に面した土地に新たに住宅を建築するとします。その場合、水道は面している私道から分岐して取り出す必要が出てくるでしょう。分岐する為には、道路を掘削しなければなりません。その掘削を行う際には、道路所有者の同意が必要となります。通常はお互い様ですから、何もトラブルが起こる事なく同意を得る事が出来るケースがほとんどでしょう。しかし、その道路所有者の中に「いや、道路を切られると見栄えが悪くなるから、やめて欲しい。もしどうしても掘削したいなら同意するハンコ代を請求する。」と主張してくる人が居た場合、持分を持っていれば、「ではあなたの住宅の給水管を入れ直す場合にも、私たちはお金を請求しますよ。」と対抗する事が出来ます。しかし持分をもっていなければ、対抗手段がありませんから、黙って支払うしかありません。同様に、本来「道路」であれば、通行を制限する事は出来ませんが、持分を持っていない為に、「道路の維持管理に費用がかかるのだから、通行料を支払え。」などの請求される可能性も考えられます。

一般的な感覚から言えば、これまで通常に利用してきたのだから、これまで通り利用出来るのが当たり前と考えます。しかし、その所有権や、持分を誰が持っているかによってトラブルへ発展してしまうケースがあるのです。仮に、これらの事を買主へも知らせずに売却を行い、トラブルが発生してしまえば、売主の責任も問われる事になるでしょう。

では、このような事にならない為の、私道に面している不動産売却する場合の対処法ですが、大きく分けて二つあります。一つは、所有権持分を持っているいずれかの所有者から持分を買い取るという方法です。持分はその大小に関わりなく権利を主張出来る訳ですから、例えば16分の4の持分の内、16分の2だけ買い取らせてもらう事で事足りる訳です。売却した方も、持分が少なくなったからと行って、主張できる権利が減る訳ではありませんから実質的なデメリットはありません。もう一つは、何らかの理由で持分を買い取る事が難しい場合なのですが、その事情を説明した上で買主へ売却するという方法です。この方法は当然ながら、公道に面している土地に比べれば、価格は安くせざるを得ません。しかしながら、説明した上で売却している訳ですから、後のトラブルに巻き込まれる可能性は極端に低くなるでしょう。

いずれの方法も何か起きた時の為の対処策ですが、実際にはトラブルになる事は非常に稀です。ですからこれまで不動産業者が仲介した案件でも「私道の持分が無い、大した説明も受けていない」状態で不動産売買が繰り返されてきた事も事実です。しかし、それは今時点でトラブルになっていない、という事でしかありません。トラブルが起きてからでは遅いのです。将来の安心を買うという意味で、きちんと対処し売却する事を、不動産業者は提案するべきですし、売主様もこういった事がある事を知る事は非常に重要だと思います。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です