空き家所有者への税金軽減措置について。

平成27年12月に提出されてた平成28年度の税制改正案の中で、非常に注目すべき改正案が含まれています。空き家を所有する所有者様にとって非常にメリットのある税制改正案です。

現在国内では空き家の820万戸を超え、総住宅数の13%以上を占めています。また倒壊の危険やゴミ捨て場の様になっているなど、周辺環境に悪影響を及ぼし得る空き家も毎年6.4万戸づつ増えています。空き家は様々な社会問題の要因を孕んでいますので、国は空き家への対策として「使える空き家は利用し、使えない空き家は除去する。」との観点から平成26年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を国会で成立させました。以前にも話題になった、倒壊しうる危険性のある空家を自治体の指示で強制的に解体出来るというのもこの流れのものです。加えて今回の改正案では「空き家の発生を抑制するための特別措置の創設(所得税・個人住民税)」が提出されています。

少し話がずれますが、居住用家屋が空き家になる契機で一番多いものが「相続」です。これが全体の56.4%を占め、次いで住み替え(新築・中古)、無償譲渡となっています。今は核家族時代ですので、世代それぞれが住宅を持つ事が多い訳で、親が亡くなり家を相続したけれども、自分自身は(遠方に住んでいて)使う予定はない。という理由で空き家になっているケースが多いと考えられるのです。特に築年数の古い建物ほど、所有者(相続人)が価値を見出せずにそのまま放置されてしまう確率は高いでしょう。また相続により発生した空き家ほど築年数が古いものです。この一番のボリュームゾーンへの対策として、今回の改正案があるのです。

一般に不動産を売却し売却益が出た場合、譲渡所得税というものが課税されます。これは短期譲渡所得税(所有してから5年以内に売却した場合)と、長期譲渡所得税(所有してから5年以上経ってから売却した場合)の2種類に分けられ、税率はそれぞれ、短期譲渡所得税41.1%、長期譲渡所得税22.1%です。仮に2,000万円の譲渡益があった場合、短期であれば822万円、長期でも442万円を所得税として納めなければなりません。ものすごい金額ですね。
今回の改正案はある一定の要件を満たせばこの譲渡所得税を大幅に軽減するものなのです。

「相続人時から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が、当該家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含む。)又は取り壊し後の土地を譲渡した場合には、当該家屋又は土地の譲渡所得から3,000万円を特別控除する。」

簡単に言えば、旧耐震基準(昭和56年5月31日以前に建築された家屋に適応された耐震基準)にて建築された建物・土地を相続し、相続から3年以内にそれらを売却する場合、耐震基準を満たすリフォームをして売却するか、建物を解体して売却すれば、譲渡所得から3,000万円控除しますよ、という事です。
例えば、被相続人が20年間所有していた昭和55年建築の建物と土地を相続し、200万円かけて建物を解体して2,000万円で売却した場合の計算式は以下の用になります。

((譲渡価格2,000万円ー(解体費200万円+特別控除3,000万円))×22.1%=【0円】
すると手出しの金額は解体にかかった200万円だけとなります。

同じ物件を解体せずに売ってしまった場合は、
2000万円×22.1%=【442万円】ですからその差は実に222万円もあるのです。解体して売却するだけで222万円多く現金が手元に残るという事です。(ちなみに耐震リフォームを行って売却するという手法はあまり金銭メリット的に現実的ではないように思われます。)

またこの改正案は平成28年4月1日から適応される予定ですから、平成25年1月1日以降に相続が発生した方が対象となります。加えて言えば、平成25年に相続を受けた方は平成28年12月31日までに譲渡しなければ適応されない、ということになります。その他、適応される細かい要件もいくつかありますが、期間以外の適応要件は比較的厳しいものではありません。ほとんどの方が適応されるでしょう。(詳しい内容はいつでもお問い合わせ下さい。)

先日出席した会合ではある衆議院議員がこの改正案は9割以上通ると豪語していました。同じものを売却するならば、手元に残るお金は多いほうが良いに決まっています。しかし税制改正は意外な程に周知されるまでに時間がかかり知らないが故に制度を利用出来ないという方も少なくありません。ですから制度が施行される予定の平成28年4月1日に向けこれらの内容をきちんと所有者様に伝える事も私たち不動産業者の仕事だと思います。「WIREDさんに頼んで良かった。」やはりそう言ってもらえる仕事を追求したいと思うのです。


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