譲渡所得税について。

不動産を売却した時にかかる税金の中で一番大きなウエイトを占めるものに「譲渡所得税」があります。自己居住用財産(家)の場合などは税金が課税されないケースも多いのですが、課税の最高税率は住民税、復興特別所得税を合わせると実に41.1%という非常に高いものです。売却のタイミングを考えることで回避できることもありますので、今日は譲渡所得税について書きたいと思います。

まず、前提として譲渡所得税は譲渡益に対して課税される為、売却によって利益を得ていない(譲渡益が出ていない場合)は課税の対象がありません。誤解を恐れずに非常にシンプルに言えば、1000万円で買った不動産を900万円で売った場合は売却によって利益を得ている訳ではありませんから課税されない、ということです。しかし例えば、元々1000万円で購入した土地に2000万円の建物を建てて、20年後に土地建物を一括で2000万円で売却したとします。この場合建物に関しては減価償却(木造であれば耐用年数33年・償却率3.1%)していくものと考えますので、例えば建物の現在価値が計算上800万円と算出された場合、取得費が合計で1800万円となり2000万円で売れた差額の200万円に対し課税されることになります。

また取得費は客観的にそれを証明できるもの(当時の契約書や領収書など)がなければいけません。それらの書類などが無い場合は売却代金の5%が控除されるのみ、となりますので、仮に2000万円での売却を行った場合、2000万円から100万円が控除された1900万円が課税対象となります。もし、仮に1900万円に対し41.1%が課税された場合780万円ほどになりますから、納める税額は大変なものです。

しかし、実は譲渡所得税を課税されるケースはそこまで多くはありません。というのも、自己居住用(自分が住んでいる、もしくは3年以内に住んでいた)住宅であれば譲渡益から3000万円が控除されるという特例措置がある為です。自らが住んでいた一般の戸建ての売却であればほとんどのケースがこちらの特例によって課税される事はありません。しかし住宅ローン控除などとは併用は出来ませんので住み替えの際には注意が必要です。例えば、住宅ローン控除が10年トータルで200万円見込まれるとして、譲渡所得税が50万円であれば多くの方は住宅ローン控除を選ばれるでしょう。その際には譲渡所得税の3000万円控除は使えませんので、50万円を納税する必要が出てくるのです。譲渡益が3000万円を超える不動産を所有されている場合でも、裏技的に配偶者控除を利用して控除額を6000万円まで増やす方法もあります。誰でも出来る訳ではありませんが、上手く使えば非常に有効な策です。

また、自分が住んでいた家を賃貸に出して頃合いを見て売却しようかな、と考えている場合にも注意が必要です。というのも、3000万円控除を受ける適応条件の中に「住んでいる住宅か、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売る事」という項目があり、とりあえず3年ぐらい貸して賃貸収入を得てから売ろうかな、と考えた場合、3000万円控除が使えずに3年間の賃料収入以上に税金を支払わなければならなくなった、というケースも考えられる為です。

課税される税率については最初に申し上げた最高税率である41.1%課税される「短期譲渡所得税」と22.1%課税される「長期譲渡所得税」とがあります。これは所有期間が5年を経過しているか否かで短期、長期の区分分けがなされます。(相続での取得の場合は期間は加算されます。)4年前に購入した住宅を売却しようか、と検討する場合は少し待って5年が経過してからの方が賢明です。(譲渡益が出る場合)

と、比較的ポイントのみを書いたつもりですが、それでも複雑なのが税金です。またここには書いていませんが、適応条件も事細かに決まっており、どのケースが当てはまるのかは常にケースバイケースです。実際の売却にあたっては、一人で判断せずにまずは信頼できる不動産業者や税理士に確認すると良いでしょう。

何も策を打たずに、後で高額な税金を請求されたとなっては、せっかくの希望の金額で売却が成功してもトータルでは大失敗、という事になってしまいますから。

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